園長コラム「食べ物の好き嫌いと自己肯定感」

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NHK・Eテレで放映中の「すくすく子育て」という番組があります。幼い子どもを育てる保護者向けの番組です。
この番組では「食べ物の好き嫌いをどのように解決したら良いのか?」というテーマがよく取り上げられます。出演されるご家庭それぞれの、食べて欲しい食材(主に野菜)をどうしたら食べてもらえるのか、さまざまな工夫をしているのに食べてくれない、というエピソードが映像とともに語られています。

その中に「ミニトマトを食べてくれない」という悩みを持っているご家庭がありました。番組内では食べることを嫌がる子どもと必死に食べさせようとする親、という映像が数分間、さらっと紹介されていましたが、実際にはそのやりとりはもっと長いものであったということです。

なぜそれほどまでに食べて欲しいのか、といえば、好き嫌いなく食べてもらえることで子どもの健やかな成長を願う親ごころからでしょう。そして子どもが嫌がるのは「おいしくない」「食べにくい」など、食べたくない理由があるからです。

ここで考えておきたいのは「食べること」の目的です。
栄養をとることはもちろんですが、「食事を楽しむ」ということも人間にとっては重要な要素です。
本来食事は楽しいことのはず。それが苦痛をともなうもの、我慢しなくてはならないものであったら、どうでしょうか?

実は「好き嫌い」が表せるというのは、子どもにとって重要なことです。自分の意思を持ち、それを表現することで相手に考えを伝える、という行為に他ならないからです。
その思いを大人に受け取ってもらうことで、自分の思いを受け止めてもらえた、認められたという体験をします。
「自分の思いを受け止めてもらえた、認められた」という体験を積み重ねることで、自己肯定感(自分は生きていていいのだという感覚)が育ちます。そして受け止めてくれた大人は「信頼できる存在」として認識され、その関係が続く限り(子どもが大人になっても!)続くことになります。

自己肯定感の先には、周囲の人を大切にしよう、応援しようという気持ち(自己実現感)が育つと言われています。
今は子どもであってもいずれ青年になり、大人になります。その時に自分の思いをしっかりと伝え、相手も思いもしっかりと受け止めることができるようになるには、子どもである今、思いを大人がどのように受け止めてくれたかという体験が基礎になるのです。

ほんの些細なこと、と大人は感じるかもしれません。しかしまだ人生が始まったばかりの子ども達にとっては大人はとても大きな存在です。
まずは子どもの思いを包み込むように受け止め、その想いに寄り添うことで、今後数十年に渡るお子様との関係が決まっていく、と考えれば、食べ物の好き・嫌いを短時間に考えず、長い目で見守っていけるのではないかと思います。

園長 橋本貴志