平成28年の4月が終わり、子ども達も新しいお部屋、新しいお友達という環境になじみ始めているようです。保育園に来られるお客様は一様に「4月とは思えないほど、園児さんが落ち着いていますね」と驚かれます。
保護者様に慣らし保育等でご配慮いただいていることが一番の理由だと思いますが、もうひとつ心当たりがございます。
今井保育園は2ヶ月に1度、臨床心理士による園児の発達チェックを実施しています。今年で4年目となる取り組みですが、専門家による確認と助言は、私達保育者が子どもの育つ力をどのように援助できるかを考えていく上で、大きな参考になっています。その助言によるものかな? とも考えております。
まだ自分の気持ちや状態を伝える手段が少ない乳児の時期は、その心持ちを大人がどのように受け取るのかによって、育つ力のあり方が大きく影響を受けます。筋の良い臨床心理士は心の発達の専門家として、乳児の声やしぐさで現在の状況を把握し、子どもたちの「今」を伝えてくれます。この声なき声を聞くことが、保育には大変ありがたいものです。
乳児は伝える手段が少ないだけで、何もわからない・考えていないわけではありません。ひょっとすると大人以上に感じ・考えているのかもしれません。なぜかというと、生まれたばかりで何も知らないのですから不安と恐怖でいっぱいです。近くにいる優しい存在=保護者だけを頼りに生き残ることに必死です。
例えば「泣く」という動作は「お腹がすいた」「眠い」「(おむつが汚れて)気持ち悪い」「なんとなく不安」などの意思を大人に伝える手段です。伝えようという動作があるということは、当然意思が存在します。その意志を「無視する大人」と「理解してくれようとする大人」がいた時、どちらをより信頼するでしょうか?
乳児は「自己肯定感」という、自分は生きていていいのだ、という生存の基本的感覚を得る時期ということを考えた時、この自分の意思を理解しようとしてくれる大人の存在は大きな助けになります。
今井保育園では保育者は子どもの行なうことを「善く観る」ようにしよう、と言っております。これは「子どもの行動を善いことをしようとしていると考え、観察しよう」という意味があります。
これが子どもの育つ力を守り、自己肯定感を育む環境を作ることにつながっていけるよう、考えてまいります。
園長 橋本貴志