立秋が過ぎても暑い日が続きましたが、やっと秋を感じる気候となってまいりました。と言っても、暑さ寒さも彼岸まで、と申します。9月の下旬までは気候が安定しないので、子ども達も鼻風邪程度はひきやすくなります。体調管理には十分気をつけていきたいところです。
さて、今井保育園では「見守る保育」を行なっています。これは「子どもには自分で育つ力がある。それを邪魔したり機会を奪ったりすることがあってはならない」という考えのもと、子ども自身がそれぞれ集中できることを発見し、あるいは疑問を見つけ、自分で考えたり挑戦できる環境を用意し、保育していくというものです。
ある日突然、発見したり挑戦できる子になるわけではありません。それには「自己肯定感(自分は生きていていいんだという実感)」と「自己実現感(自分は努力して目的を達成できるのだという実感)」が必要になります。自己肯定感は0〜2才、自己実現感は3〜8才に作られると言われていますから、この年齢の間にどのような体験をするかで、実感を獲得できるかが決まってきます。特に大人との関わり方が大きな影響を及ぼします。
「そんなこと言われてもどうすればいいかわからない」と思われるでしょう。実は大人が子どもに対して、考える時の出発点を少し変えるだけで、自然と自己肯定感も自己実現感も育む環境を準備できます。
その出発点とは、「子どもの行動を正しいものとしてとらえる」という考え方です。「子どもはイタズラをするもの、未熟なもの」と考えていると、その行動はムダなものばかりで時間と労力を取られるばかりのくだらないもの、ということになってしまいます。しかし「イタズラ」とされるものは、子どもにとって様々な実験である、と考えるとどうでしょうか? 「積み木を投げる」行為は「飛んでいく積み木の観察」や「落ちた時になる音の実験」かもしれません。「水を出しっぱなしにして、バケツからあふれさせている」のは、「水がバケツからこぼれ落ちていく時の規則性を観察」しているのかもしれません。
まだ首がすわらない赤ちゃんが、手足を口でなめることがあります。これは「口で自分の体の形を知ろうとしている」「足をなめる体勢をとることで、座る時の足の形を練習している」等の説があるそうです。きたないからやめてほしいな、というのは大人の理屈。自分を知ろうとする機会、あるいは座る練習となれば、むしろ積極的にやって欲しいと思うのではないでしょうか。
自分を肯定的にとらえてくれる大人に囲まれている子どもは、その後挑戦することに恐れが少なくなります。挑戦の結果、嫌な結果(失敗、ケガ、望ましくない結論)になったとしても、肯定的にとらえて再挑戦できるようになります。
自己肯定感・自己実現感を得られる0〜8才の期間はその貴重性から「宝石の時間」と言っても言い過ぎではありません。保育園もその時間を大切にするよう考え続けておりますが、やはり保護者の方ほど子どもにとって大きな影響をもたらす存在はありません。
しかりたい気持ちに少し待ったをかけて、見守っていただければ幸いです。
園長 橋本貴志