「善く」見る

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 乳児期、ずり這いを始めた子どもは好奇心のまま色々なところに動いていきます。そこで夢中になるもの―引き出しの取っ手、ピカピカ光る電子機器、転がっているビー玉などなど…―に出会うと、じっと見つめたり、口の中に入れたりします。危ないものを口に入れるのを止めるのは当然として、好奇心からの行動すべてをとめてしまうというのは少し考えなくてはなりません。せっかくの好奇心を止めるというのはもったいないです。
 ずり這いをしてふと動きを止める、のけぞるようにしてじっと窓の外を見ている…そんな様子が見られた時、ぜひ一緒に寝転がって視線を揃え、何を見ているのか確認してください。その時に見ているもの―窓の外の雲、あるいは木の葉っぱ、あるいは虫―に子どもの好奇心が集中している瞬間に出会えるかもしれません。またそんな時には声をかけてあげてもいいでしょう。「わー雲さんがお空を飛んでるねぇ」「葉っぱがゆらゆらゆれてておもしろいね」「虫さんだ。虫さんはどこに行くのかな?」子どもが考えているかもしれないことを想像しながら、一緒に楽しんでみる。
 するとどうなるか。言葉をまだ持たない子どもにとって大人がかけてくれる声は大切な学びの対象です。ましてや自分の思いに寄り添った言葉をかけてくれるとしたら、そしてずっとそれを続けてくれたとしたら、成長した後にもその大人は信頼できる人として認識されるでしょう。少なくともその可能性は上がります。
 幼児期になったとしても諦めることはありません。同じように思いを代弁してくれる大人がいて、いつも寄り添ってくれていたら…どうでしょうか。

 子どもは大人をよく見ています。この「よく」には「善く」という字を当てても良いでしょう。子どもは大人を絶対に正しいと考え、肯定的に見ています。この時子どもが見ているのは大人の行動そのものです。言葉で何を言っていたとしても、行動がそれに反したものだったら、子どもは行動の方を真似します。
 子どもの育ちは、我々大人からの助言ではなく、背中を見せる行動から促されていくのです。大人こそ、子どもの様子を「善く(いいことをしているものとして)」見てあげると、人を信頼できる子に育つ、かも知れませんね。